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部長へちょっぴり本当の事を伏せつつの報告を済ませ、何事もなかったように通常業務に戻ると案の定彗星の様子が気になっているようである高橋は時折視線を投げてきた。
気付かないふりでかわしていると、休憩時間に入ってすぐに近付いてきた。
「宮嵜さぁん、さっきはどこへ行っていたの~?」
がんばってー、とか何とか言ってた口がわざとらしく訊いてくる。
「副社長室です」
机に向かったまま、極力視線を合わせないようにした。
「えぇ~っ?どうしてそんな所に~?」
またしてもわざとらしい問いに、今度は向き直って真っ直ぐに高橋と目を合わす。
ここでハッキリとした口調で答えないと、そう思えた。
「副社長がお話があるということで。でも特に何も問題ありませんでした」
「…わざわざ呼び出されたのに~?」
「問題ない」の言葉に、高橋は少し不満げに口を尖らせた。
「はい。お茶をいただいて、楽しくお話してきただけですよ」
「そんなはずっ…」
「…何が''そんなはず''なんですか?」
少し強気な口調で返すと、はっとした表情を浮かべて、
「何でもないわよっ」
いつものように語尾を伸ばすのを忘れて、そのまま自分の席へと戻って行った。
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