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第12話
「鴻さん。会社の高橋さんとは以前から知り合いですか?」
仕事帰りにBARに寄って、鴻手作りの夕食を食べ終えた頃。
何気なく訊ねられたように装ったものの、この問いを投げかけるまでに数日の時間を要した。
付き合っている人がいないか何度も訊かれたと言っていた。
いつから?
それを訊かれたのって、鴻さんの部署内で?
周りにギャラリーがいる中だったのか、とか。
結局、高橋には暴露した訳だけど、どこまで内緒にしたいのかな。
副社長達の話を聞いてから色々なことが気になっているのに、直接ストレートにそれらを訊く勇気はまだ持ちあわせていない。
「いや、うちの部に頻繁に来るようになってから知ったって感じだよ。なんであんなに来てたのかは結局分からないけど」
…やはり鴻さんは気付いてないんだ、と高橋を少し不憫にも思った。
「高橋さんといえば、あの後何も言われたりとかなかった?」
「はい、特には。大丈夫でした……けど」
「何?やっぱり何かあった?」
「いいえ、高橋さんのことじゃないんです。その……言ってしまってもいいのか…」
「言ってしまおう。じゃないと俺が気になる」
八重歯をのぞかせた苦笑いで鴻が続きを促す。
うん、覚悟を決めた。
「実は1週間ぐらい前に副社長に呼ばれて、付き合っているのか訊かれて「はい」って答えちゃいました…」
先に肯定の返事をしてよかったのかという不安もあった。
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