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反応を待っていると、カシャンと音がした。
隣にいる鴻が掴んでいた箸を落としてそのまま固まっている。
かと思うと、すぐに眉間に手を当てて長いため息をついた。
「どっから漏れたんだか」
ぼそっと言った言葉は彗星にははっきりと聞き取れなかった。
「何か言われた?」
彗星に対しては気遣う様子でも、セリフはどこか呆れた言い方をしている。
「いいえ、特にこれといっては。楽しい方達でした」
「達?もしかして由里おばさんも?」
「はい、専務も一緒でした。またお話しましょうって言ってもらえましたよ」
「はぁー、うちの親達がごめん。こうなりそうだって分かっていたから桜達にも口止めしてたんだけどな…。また勝手なことしないように釘さしとくから」
そうなんだ…。
今回内緒にしていたのは、私のことを考えてくれていたからなんだ。
ここ数日の悩みがすぅっと消えていき、ついつい顔は綻んでしまう。
「よかったです」
「ん?」
「その…鴻さんのお母さん達と話している時に、今回は桜さんから聞いてない。って言われてたので。私とのこと、知られたくないからなのかなって…ちょっと思ってしまってて」
「え?」と「いやいや」と、鴻が慌てる。
「そんな訳ないよ。あの2人がしそうなこと予想できたから言わなかっただけで。ごめんね、不安にさせて」
「いいえ。考えてくれてたってことがもっと嬉しいです。それに、最初は鴻さんとのお付き合いを認めないって言われるのかと思って恐かったですけど、相手に会いたかったって言ってもらえたので、それも嬉しかったです」
「あー、もうあの2人組は」
また独り言のように鴻がつぶやいた。
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