第1話

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『Ambis』に初めて足を踏み入れたのは、およそ半年前。 仕事がいつもより早めに終わり、引っ越してきたばかりの慣れない街を探険がてらに歩いていて偶然見つけた。 いつも利用しているN駅から徒歩でわずか5分ほどの距離に、小さいながらも名のついた商店街がある。 その通りの途中、ざっと見た感じには目立ったものは何もないのに自然と惹かれるように交わる小路を曲がると商店街と並行する少し大きめの通りへとつながった。 そこからさらに直感で右方向へ進んで行く。 ここも元々は商店街の一部だったのだろうか、今では建物は寂れて閉まっているシャッターばかりが続いていた。 そんな中に、まだ開店して間もないと思える真新しい入口を構えた店を見つけた。 まるでわざと目立たないような場所を選んでいるかのような。 どうして、わざわざこんな寂しげな所に? だけど、そんな疑問よりもすぐに外観の一番主役のように目立ったドアに反応する。 表にガラス、そのガラス裏側にはブラウンとベージュでチェック柄となっている板が重ね合わせてあり、ブロンズ色の金属枠で囲ってあるドア。 「HiNOiだ!」 そう確信があった。 ドアにはOPENの札がかかっていて、興奮した勢いそのままで中へと入って行った。
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