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「こんばんは。…あの…入口のドアって、HiNOiですよね?照明とかも。もしかしてそこのカウンターもですか?」
いつもより力強く心臓が働いているかのようにバクバクという音が頭に響いて聞こえている。
こんなにも大きな音だと相手にも聞こえてしまいそう。
まるで、その音を隠すかのように人差し指でカウンターを指しながら一度に訊ねた。
噛まないで言えたことに自分を褒めてあげたい、そのぐらい緊張している。
「…え?…えぇ、そうです。よく分かりましたね」
なんだか男性の返事が少したどたどしい。
けれど、それを疑問に思うほどの余裕が今の彗星には全くなかった。
返事をもらえたこと、HiNOiで合っていた、ということにまずはホッとしていた。
「はい。私、HiNOiに勤めているので」
そう言いつつ、緊張しながらも会話をしているというだけで嬉しいと感じている自分がいる。
「…あぁ…それで分かったんですね」
ふぅっ、と小さく息をつき、「気づいてないか」と、ぼそっとつぶやいた声は彗星には聞こえていない。
実はこの男性、彗星が店に入ってきた時から態度にはあまり出さずとも大きく動揺していた。
突然の来客にではなく''彗星''が入ってきたものだから驚いた。
もちろんこの時、彗星はその理由を知る由もない。
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