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また思わず視線を落としたところで、何かを思い出したように男性が切り出した。
「言うのが遅くなっちゃいましたけど、何か飲まれますか?」
そうだ。
後のことは何も考えずに入ってしまった結果、ここはBARだった。
お店に入ってきたきっかけを答えるのにわざわざ理由を作るのも変な気がするし、ましてや嘘なんてつきたくはない。
「すいません。実はつい外観に惹かれて、何のお店かも確認せずに入ってきてしまったんです。BARって初めてでお酒も詳しくないですが大丈夫ですか?」
白状した告白を聞くと、男性は一瞬驚いたように見えてから小さく笑った。
「もちろん大丈夫です。それに、無理して飲まなくていいんですよ?この店に興味を持って入ってきてもらえたってだけでも嬉しいですから」
そう返す、くしゃっとなった笑顔。
またその笑顔にノックアウト。
勝手にそんなことを思っていることもバレませんように、と必死に返す。
「いいえ、飲みたいです」
BARなんて初めてな上にお酒にも疎い。
メニューを見ても聞いたことのないカタカナばかりが並んでる。
お酒の種類だって分からない。
メニューに書かれた親切な説明書きも、残念ながら彗星の前では無意味なものとなっていた。
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