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第1話
ーPM7時過ぎ。
太陽が沈み始める時刻もずいぶんと早まってきた季節。
彼女は今日もお気に入りの空間へと足を運ぶ。
そこは、仕事の疲れもイヤな気分や悩み事も忘れられる場所。
ーそして、
なによりも"あの人"に会えるのだからー
そこは『Ambis(アンビス)』という名のとっても気まぐれなBAR。
というのも、営業時間も定休日も決まっていないので運がよければ開いているという少し変わったお店。
ここに、その運がよければの話で週1~2回ほどのペースで通っているのは、宮嵜彗星(みやざき ほうせ)。
名前にちょっぴりコンプレックスを持った23歳の独身女性である。
「こんばんは~」
彗星がいつもの調子で店へ入っていくと、返ってきたのは2つの男性の声。
「いらっしゃい」
先にそう言って迎えてくれたのは、目尻がほんの少し垂れた大きな目にすらっとした長身に、見た目から温和な人柄がにじみ出ている。
このBARのマスターであるコウ。
そしてもう1人、
「こんばんは」と返してきたのは、こちらも長身で程よい筋肉質でスポーツマンのような爽やかな風貌をしている。
コウの幼なじみ兼この店常連の柘椅(たくい)、愛称はタクだ。
今日店内にいるのは、この2人だけ。
いや、
今日も、と言っても過言ではないかもしれないけれど。
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