第6話

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それ、気付いて無いフリしてるだけじゃなくて、 マジで分かっていないんだって…意識してんのは俺だけだって、 そう思い知らされただけで…、 「俺の事、もっと見てよ?」 自然と口が動いてしまった。 「たかちゃん、俺ね…」 言いたい言葉はある筈で、 伝えたい言葉はもっと別のものなのに、 浮かんでくるのは心にも無い事ばかりで言葉を無くして口を紡いだ。 続く言葉が、見つからない。 また、見えなくなってしまう。 俺は…今、 何を伝えようとしたんだ… 完全に思考回路が停止した瞬間、 タイミング良く扉が開かれて、アイツが姿を現した。 この時、不意に出た溜息は、 安堵のものなのか、前途を危惧したものなのか… 心の何処かで分からないフリをするしか選択肢のない自分に心底うんざりした。
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