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高橋さんを途中まで見送ってから、足早に彼女の居る部屋へと足を運んだ。
俺が居ない事で、彼女が一人で寂しがってるかもなんて…思い上がっていたのかもしれない。
現実は、俺の存在なんて、
”弟”以下には止まらずに、ゲームの”ハル”以下なんだから。
失笑。自分自身に頭が痛くなった。
「……楽し、そうだね。」
「────!?」
背後から彼女の握りしめている携帯を覗き込むと、
端正な顔した男性と、目がキラキラした女性がキスしてる絵の表示画面が飛び込んできた。
……へー。
ゲームって、こーゆーのもストーリーに盛り込んでんだ?
…って初めて、乙女ゲームというものを目の当たりにして、
どうしたらいいか分からない気持ちになる。
引きはしないけど、ゲームなんかより…現実見ようよ…
俺、相手になるし、とか良からぬ事も脳裏をよぎってしまう。
バッと、咄嗟に携帯を枕元に隠そうと、悪足掻きを見せる少しニヤケ顔の彼女。
”お前は思春期のエロ本読んでる男子学生か”って突っ込みたくて、噴き出しそうになった。
行きのバスでだって必死でゲームしてたのに、またゲームに夢中ってどんだけだよ。
ってか、やり過ぎじゃない?
俺の存在、百パーセント忘れてたよね、今の今まで。
---なんか、面白くなくて…
少し悪戯心が作動した。
「な、何でっ!?」
彼女の戸惑いと、焦りと不安のごちゃ混ぜになったような声に、
心底--、、げんなりしてしまう。
俺も自分に聞きたいよ…
何で、一緒に風呂に入ろうなんて考えが浮かんじゃったんだ。。
手が出せない以上、…こんな美味しい状況でも、…地獄でしかねえーし。。
無意識に高ぶりだす身体を抑えて、
他愛のない会話で意識が飛ばないように懸命に心掛ける。
けれど、やっぱり焦る気持ちだけは、隠しきれずに、
彼女の心の中に居る”本条”って奴の何処が好きなのかだけ、聞きたくなった。
彼女からすぐには返事を聞けないって、どっかで軽い気持ちに思ってたんだ。
聞いてみても、いいかな…位の。
それなのに。
「……や、優しくて、
…アンタみたいに笑顔で誤魔化さないところ?」
「ーーーーーふーん。」
すんなりと戻ってきた言葉は、俺と比較されたトコロで。
ズシンと……衝撃が走った。
笑顔で誤魔化すって…、なんだよ……
ちゃんと俺の事分かってんじゃん。
それなのに、どーして…
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