第6話

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彼女と同居生活を初めて もうすぐ、約束の一ヵ月---。 相変わらず、 彼女との距離は 変わらない。 縮まない彼女との心の距離に 俺は静かに 日々イライラを募らせていた。 休日の朝。 静まり返る部屋に時偶聞こえる唸り声。 何かが…取り憑いているとかでは勿論ない。 「……。」 悶々と朝っぱらから何か悩んだ様子丸出しの彼女。 携帯の画面をスクローズさせながら、 何度も溜息をついて頭を抱えてる。 どうしてこう… 笑えるんだろう。 「なぁに、そのこの世の終わりみたいな溜息。 聞いてあげよっか、俺」 膝を抱えてソファーに寝転がっていた彼女に覗き込みように顔を覗かせる。 なのに、 「……。」 リアクションさえ、取らない彼女。 俺とパチッと合った目を逸らして無言で顔を背けられた。 ----俺の爽やかな笑顔を無視するとは… いい度胸じゃねえか。 衝動でヒョイッとソファーに飛び乗って、 彼女の頬をグイッと片手で掴んでこちらに向かせた。 「ちょ、それ酷くない?無視って一番傷つくし」 「~むぐっ!?」 俺の手で、ムギュッと歪んだ彼女の変顔。 その悔しそうな彼女の表情に噴き出しそうになるのを堪えて見つめていたら、 --あ、、ヤバい。 距離を詰め過ぎてしまい、思っていた以上に彼女の顔が間近に見える。 そして何故か今度は俺の目を逸らすどころか、食い入るように見つめ返す彼女の熱い視線。 …不思議だよな。 彼女からは、嫌な気持ち悪い女特有の甘ったるさとか感じない。 むしろ…触れてみたい…なんて思ってしまう。 「何?、そんなにキスして欲しいの」 引き寄せられるように彼女との距離を縮めながら、 クスリッと静かに微笑んだ。 触れていいわけ…ないのにな。 あと数センチのこの距離で、俺は何がしたいんだろう。 自分でしといて分からなくなった。 吐息を感じる触れそうな距離に戸惑う内に ジリジリ近付く俺の顔が彼女の両手で退けられた。 別に、そのまま流されるようにキスしちゃえば 良かったのかもしれない。 そうすれば 何かが変わるかもしれない。 なのに… 出来ない。 彼女の弱い力で、押し返される事を 望んでいる自分がいるんだ。 「チェ、あと少しだったのになぁ」 「…。」 思わず、言葉が漏れて、 「ん?」 向けられた彼女の訝しげな視線を まるで何でも無かったかのように笑って回避する。
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