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三津さんは俺に背を向けて、二人分…以上のお酒やワインボトルや一升瓶をカウンターの上に用意しながら
「春樹君、今の今まで気付かなくて御免」
と、どこか神妙な面持ちで口を開いた。
「--ハイ?」
「いや…。ずっと春樹君達のイチャつき場面に遭遇して
邪魔してたような気がしてね。
…でも、今実際に逆の立場になって…なんだろうな、、
”見ちゃいや~んwww”って気になるな?笑」
「……。」
いやいや、俺にそんな照れ顔向けられても…と、
冷めた表情で俺は三津さんの視線を逸らした。
「春樹君、とりあえず無礼講と行こうか?」
グラスを掲げて楽しげに笑う三津さんに、
「…賭けしてんのにですか?」
と言いつつ自分もグラスを掲げ、軽く合わせた。
「ハハッ、そー堅くならずに!
キス位いいじゃない?ガキじゃあるまいし。」
「……。」
そー言われると、そうなんだけれど…と黙ってしまう。
「なあ、高嶺さんと春樹君はいつから知り合いなんだっけ?
…なんか全く接点なさそうだけど。」
「……俺が…高1の時です」
「へー。随分昔からなんだな、
高嶺さんはその頃はまだギリギリ大学生かぁ~、
どんな感じだった?可愛いいんだろーなぁ。」
「……地味目、でしたよ。」
寂しげに眼を伏せた春樹に、三津は”ふーん”とだけ呟いて、
空いたグラスにボトルワインを注いだ。
乾杯を行った後、グラスが空いて注いで…と繰り返す事、数回。
まだ10分も経ってないというのに…
「…ピッチ…早くないっすか?」
「そ?フツーじゃない?」
あっけらかんとした表情で、三津さんはまた淡々とアルコールを口に入れていく。
フウ、と溜息をついて自分も2杯めの酒を注いだ。
「そっちは、いつから知り合いなんすか?」
「あー…、俺らは幼馴染だからな。
物心付いた時から居るから~、
…やべぇ…もう20年位前か…」と言葉を漏らすなり小さく笑った。
20年…けして短い年月ではない。
「彼女の事好きなんですよね?…なんで、好きって伝えてあげないんすか」
「ハハッ…その言い方。どこか青春ドラマみたいに聞こえるのは
俺の頭がおかしいのかな?」と三津は苦笑する。
視点の合わない瞳でグラスを傾けてみせる春樹の横顔を見つめると、
すでに顔は真っ赤で。
まだビール2杯しか口にしてない癖に、
本当…酒弱えんだなと、三津は口元を歪めた。
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