第6話

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バーカウンターから、彼女の寝ている寝室へと二人で移動して、 躊躇なく彼女のベットの傍に腰を下ろすのをただ眺める。 逆上せて意識のない彼女に、キスをするのは三津さんで。 賭けに負けた俺は、何も言える立場ではない。 「……んっ…」 寝顔を覗かれ、人の気配に気づいたのか、高嶺がモゾッと少し体を動かした。 何とも悩ましげな声に二人で反応して、三津はフッと春樹の方へ顔を向ける。 「(…プッ。悔しそうだね?)」 からかって楽しむように笑いながら横目で一瞥されては、 「(---別に。)」 ブスっと不貞腐れた顔するしかない。 ”このまま目を覚ましちまえっ!”と思ってみても、 彼女の安らかな寝息が静かな部屋に響いているのが現状で。 ”起きろよ、アホ……。”と思いながら深く溜息をついた。 その溜息に気付いたのか、 「(大丈夫だよ、俺上手いから。)」 と自信ありげに微笑んでみせて、彼女の肩に触れていく。 そんな姿を、何故自分が見守るように突っ立って見てなきゃいけないのか。 「……。」 ゆっくりと近づいていく二人の距離。 ベットの背もたれに片腕をかけて、彼女に覆い被さるように重なっていく顔と顔。 ギリッ--っと拳に力が入るのに、動けない身体。 見てらんねぇ…、って眼の前の二人から背を向けて、その場から立ち去ろうとしたら… 「(そこにいろよ、俺様命令!)」 と、どこか勢い込んだような声が後ろから聞こえてきた。 「……っ」 --ハアア!?命令って、何様だ!! お前らのキスシーンなんか見たくもねーンだよって、首が折れるんじゃないかって速さで振り向くと、 視界の先で重なっていたのは… 三津さんの唇と--- --彼女の額で。 「---」 絶句。 「……ブッ。何っ、…その顔笑えるね?(笑 でも、その今の顔が何よりも彼女への気持ちなんじゃないの。 早く素直になっちゃえよ。」 片眉を上げて不敵な笑みを見せながら、 俺の肩に手を置いて、颯爽と姿を消していったソイツに、 ---マ・ジ・で、ムカついた! 俺の事、からかいやがったな!!ってか俺だって、ガキじゃねーし。 キスの一つや二つでガタガタ言わねーつーのに! 変な気を遣われたせいで、何だか気恥ずかしくなってしまう。 余計なお世話、だっつーの… 溜息をついて自分の中に残るのは、--知らなかった強い衝動。 何とも言えない気持ちでその場に項垂れて、小さく笑った。。
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