第6話

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俺の考えている事、分かって欲しい。 ---欲しくない。 この葛藤を あと何回繰り返せば、 俺は彼女から離れられるかな。 「で。どうしたの、たかちゃん?」 キョトンとした顔で彼女を見つめて、 「何かあるなら聞くよ」 ふわっと大きな手で優しく彼女の頭を撫でながら、落ち着く甘い声で微笑んでみせる。 ”何かあるなら聞くよ、俺?” そんな俺の言葉に彼女は躊躇いなく言葉を漏らすんだ。 …馬鹿だよな。 いい加減、俺の事少しは疑ったっていいんだよ… 色んな気持ちを紛らわそうと、腹筋しながら彼女の話を聞いてあげる事にした。 -----のに。…なんでだよ? なぜか俺の腹筋を手伝う様に、足もとにしゃがみ込んで重しになっている彼女。 ---意味不明。。 ”話を聞いたげるからそこに座っててよ”、って 冗談で言ったのに、言われるがままにそうしているなんて。 ハアァー… この状況の危うさに、本気で気付かないのか。 将又…天然馬鹿なのか。 誘ってる、わけじゃないのは分かるけど。 彼女の話を聞きながら”ふ─ん”ってたまに気のない返事を返して 密かに自分と葛藤している俺の気持ちも、分かって欲しい。 膝下ふくらはぎをスルスルとなぞられる様に触れる彼女の手にゾクゾクと痺れるような感覚が走って、もはや腹筋している場合ではない。 ああーーー、… 「いい加減、 クスグッタイんですけど」 「…あ、え!?」 絞り出すような俺の声にピクリと反応して、 彼女の目線が俺の足もとから、ゆっくり俺へと向けられた。 「ご、ご、ごめ!!」 俺と目が合った瞬間、バッと身体ごと退こうとする彼女の腕を すかさず掴まえる。 「いつの間に~スキンシップはいいことになったんだっけぇ?」 「あ、いや、違っ…」 否定したって、逃がしてあげないよ? 俺を一体どーしたいんだよ…って思いながらジトっとした目線で彼女の次の行動を見守る。 俺の予想していた事とは裏腹に、 「違、…くないから。…ごめんなさい」 あっさりと、しゅんと俯きながら素直に謝る彼女を見つめて数回瞬きを繰り返した。 --ふーん… そんなしおらしい態度を見せられたら口元が緩んでしまった。 ヤバい。楽しい…(笑 「じゃあ、 俺もいつかスキンシップでお返しさせて貰うから」 「~ええ!?」 「なに、まさか嫌なんて言わないよね?」 グッと言葉を飲み込んで何も言い返せずに俯く彼女に不敵な笑みを浮かべる。
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