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この状態で、さらに誰かの面倒なんて見れるわけがない。
口を紡いだままの俺に、”フォローするから”と言われたって、
フォローしてくれた事なんて一度もない癖に良く言うよ、としか思えない。
…思えないけれど、と伏せようとした視線を上げて、
遊佐にゆっくりと視線を戻していく。
全部調べ上げた上での判断ならば、従うしか…選択は無いのだろう。
大きな溜息をつく俺を、遊佐は満足げに見下ろしている。
「…マジ、俺がやるわけ?」
再確認を兼ねて、遊佐へと目線を上げる。
精一杯の嫌気を込めて、
俺の言葉に否定して欲しいという願いを込めて。
「他に居ないって、先程から言ってる」
…まあ、想像通りな回答だよな。
遠慮ない一言で片付けられてしまった事に、再度大きく息を吐いた。
「春なら出来るよ」
感情を出さずに、けれど言い聞かせるように淡々と告げられた。
「--ナニガ?」
”何を根拠に言ってんだよ”と
手に負えないと言わんばかりの睨みをきかす。
それを物ともせずに、
ふと静かに微笑みを向けられる始末。
「イイ子だ、春」
「犬じゃねえし!!」
どいつもこいつも俺の事なんだと思ってんだ、と顔を顰めるしか出来なかった。。
半ばやけくそな気持ちで迎えた、
---翌週末。
ダブルデート計画を実行する予定でいたけれど…
当日のことは、”俺に任せておけばいい”って
彼女に言った手前、少しやりづらいという気持ちは正直あった。
”ダブルデート計画”と命名していても、実際に何をどうするのか彼女に伝えてないから心配する事は何もないのだけれど。
遊佐のせいで状況が変わってしまった事に、イライラが募る。
「---じゃあ、高橋先輩行きましょうか」
「うん」
仲睦まじく見せる為に腕を組ませながらも、
高橋先輩は小さく囁きながら俺に不安げな瞳を向けた。
「(ねえ、春樹君。何処に向かっているの?)」
ダブルデート計画のつもりで4人で合う事にしたのだから、彼女が不安がるのも無理は無い。
普通なら、彼女は三津さんとペアを組むのがセオリーってものだ。
俺が今朝、遊佐から聞いていた高橋先輩の携帯に連絡を取った事で、
彼女とこうして腕を組む状況を作り出している。
三津さんが来る事は、高橋先輩には事前に伝えていた。
そして敢えて目線を合わせるのさえも止めて貰った。
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