インビジブルガール

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 私は恵太に憎まれている。いなければいいとはっきり言われた。私はただ恵太を愛していただけなのに、大人しく北海道で彼が帰ってくるのを待っていただけなのに、どうして彼にこんなにも憎まれなければならないんだろう。  深く、深く何かが私に刺さって抜けない。実際にはなんともないけど、そんな感覚が確かにする。恵太が吐く私への憎悪が私を深く抉る。ショックだった。大好きな人に向けられる負の感情は、他の誰のどんな罵詈雑言よりも私を傷つけた。 「全部あいつのせいだ。あいつのせいで君をこんなに傷つけている。あいつなんか最初からいなければ良かったのに。そうだったら君をこんなに泣かせずに済んだ。それか俺らがもっと早く出会えていれば!」 「私ももっと、あの人よりも早く恵太と出会いたかった。そうすれば私達は普通に、誰からも責められることもなく一緒になれたのに! こんな運命にした神様を呪いたいくらいよ!」  二人はギュッとお互いを強く抱き締め合った。まるでの悲劇のヒーローとヒロインのように。私は、この愛し合うお互いにとって最高のカップルである二人の邪魔をする悪役みたいだ。私が彼らにとっての邪魔者になっている。悪いことは何一つしてないのに、恵太が勝手に私を裏切って新しい女を作った癖に、どうして悪者扱いされなくちゃならないのか。理不尽だ。
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