インビジブルガール

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「電話。また電話がかかってきたの、今日も」 「透子の親か?」 「出てないからわからないわ。でもきっとそうよ」  彼女は静かな声でそう話ながら恵太にしがみつく。私の前で恵太に密着し始める彼女に強い苛立ちを覚えたが、それよりもなぜ私の親が恵太達に電話をかけてきたと断言されているのかが気になった。私の親が恵太達に一体どんな用があるというのだろうか? 「まだかけてくるのか。俺や君を責めたって透子は戻ってこないのにな」  恵太は顔をしかめ、忌々しげに言った。私の親に対しての憎悪さえ感じる恵太の様子。それに私が戻ってこないとは一体どういうことだろうか? 私には何がなんだかわからなかった。 「けど恵太や、特に私を責めたくなる気持ちはわかるわ。やっぱり私達の関係は許されるものなんかじゃなかったのよ。関係を持つべきじゃなかった。だって私はあの人からあなたを奪ってしまったのよ」 「そんなことはない。俺は君と出会えて愛せてこんなにも満ちあふれた気持ちになれた。人を愛することの本当の意味を知った。あいつと惰性的に結婚して一生を共にしたってそれは決して得られなかったに違いない。だから俺は君を愛したこと、選んだことを後悔しない」  恵太は彼女を――私以外の女を抱き締めた。
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