インビジブルガール

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「私も恵太のことを愛してる。恵太と出会えて愛せて良かったと思っているわ。恵太と出会えなかったら私も人を本気で愛したりなんかできなかったはずよ」  白々しい。許されないことだったとか悔やんでいるかのように言いながら、ちゃっかり二人の世界を作り上げている癖に。私は彼女の言い分に腹が立った。それと共に恵太が口にした「惰性的」という言葉が心に刺さった。私が今までずっと大切にしてきた恵太と過ごした日々は彼にとっては全く価値がなかったんだろうか? 怒りと悲しみで私の胸は苦しくなった。 「でもね、私と恵太が一緒になった結果、あの人は死んでしまった。私達への恨み言を連ねた遺書を残して自殺してしまったのよ!」  彼女は顔を上げて叫んだ。彼女の大きな目からは涙が溢れ出していた。 「だから私達は、私は責め続けられている。今まで何十回も。これからもずっとずっときっと責め続けられる。お前が殺したんだ、返してって」  彼女は恵太の胸に縋りつきながら声を上げて泣き出した。私は彼女が何を言っているか理解が追いつかず、呆然とその様子を見ているだけだった。  彼女が言う「あの人」とは間違いなく私のことだ。でもそれなら私が死んだとは、しかも自殺したとは一体どういうことなのだろう? 透明人間化しているものの、私は今二人の目の前にいる。確かに存在している。勝手に殺さないで欲しい。
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