インビジブルガール

27/33
55人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
 毎日午後十時からの通話と、メールだけで我慢してきた。私の一体何がいけなかったの? どうして見ず知らずの女なんかを恵太は選んだの? ずっと恵太の恋人で婚約者にまでなった私じゃなくて、まだ出会って多く見積もっても一年ぐらいしか経っていないであろう彼女を。なぜ私が捨てられなければならなかったのか。  私には恵太を繋ぎ止めるだけの魅力も価値もなかったと言われたみたいだった。私の存在なんかなかった、最初からいらなかった、自分そのものを否定された気がした。恵太にとって私と過ごした日々なんて無意味で無価値だったのだ。 私なんかいてもいなくても変わらない。恵太に愛されない、捨てられた私なんかに存在する価値なんてないのだ。  その事実を突きつけてきた、そして恵太の愛を受ける彼女が憎かった。今まで二人で過ごしてきた時間をいとも簡単に捨てた恵太が憎かった。私の心を引き裂き、止まらない痛みに苛まれ続ける責め苦を与えた二人を恨んだ。恵太と彼女だけ幸せになるなんて、とてもじゃないが許せなかった。だからせめてもの意趣返しにと私は恨みつらみを全て紙に書き付けたのだ。悲しかったこと、苦しかったこと、憎くてたまらないこと。真っ暗で深海に沈んでいるかのように息苦しくて、重くのしかかってくる水圧に私は押し潰され、抜け出すことが最後までできなかった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!