インビジブルガール

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「ちょっと」  私は不平の声を上げる。しかしサラリーマンは表情一つ変えないで、発券機を操作し続ける。  私はサラリーマンの顔の前で手を振ってみた。しかしこの中年男は瞬き一つしない。苛ついた私はサラリーマンの肩を思い切り叩いてやった。けれど彼は肩を押さえることすらせずに、座席予約の手続きを黙々とこなしていた。  私は仕方なく発券機から離れた。どのみち機械は私に対して反応してくれなかったのだ。あの場にいつまでいてもしょうがない。  私は受付カウンターへと歩く。こうなったら人から直接チケットを手配してもらおう。  空港内は人がまばらだった。六月という祝日も何もないこの微妙な時期。しかも平日の昼間。いるのはスーツ姿の仕事人と、年齢層が高めの旅行者ばかりだった。 「すみません。東京行きの便に空きってありますか? もしあるのでしたらチケットの手配をお願いしたいんですけど」  髪を一つにまとめ制服をきちっと着こなし、上品に綺麗なメイクをしたカウンターの受付嬢に声を掛けた。けれど彼女は長いまつ毛を伏せたまま、仕事に没頭していた。手元のパソコンをいじったり書類を書き込んだりせわしなく作業をしている。  やっぱり私のことが見えていない。
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