インビジブルガール

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「ごめん。俺があいつと婚約までしていたばかりに、君をこんなにも傷つけている。けど俺は君を愛しているんだ」 「恵太が謝る必要なんてない。私は恵太が悪いとは思っていないわ。どれだけ私達の関係がいけないものだったとしても、私も恵太を愛しているわ」  その後、お互いの唇を重ね合わせる二人を見て私は思う。私が恵太を一番愛しているように、恵太も彼女のことを一番愛しているのだ。恵太の一番が私じゃなくて彼女なのが憎い。けれどだからって彼女を殺したりしたらきっと恵太は悲しむし、私をもっと恨むだろう。私だって恵太に何かあったら――怪我や病気をしたり、ましては死んでしまったりしたらなんて考えるだけで恐ろしいし、それが人為的なものだったらその首謀者を絶対に許さない。殺してやりたいほど憎むだろう。  恵太にとって大切で必要なのは彼女だった。私がどれだけ恵太のことを想ったってその事実は覆せない。むしろ私は恵太にとって邪魔な存在なのだ。いなければいいのだ。必要ないのだ。恵太に――最愛の人にいなければ良かったと言われた。私なんかいらないのだ。邪魔でしかないのだ。
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