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普通だったらカウンターの真ん前に客が突っ立っていればいくらなんでも気づく。目の前の受付嬢がどんくさい可能性も考えられるが、やや吊り上がった切れ長な目をした、見るからに利口そうな彼女がそんなわけないだろう。
このまま声を掛け続けたところで埒が明かないので、私は仕方なくカウンターから離れた。
航空券を手配するのは無理なようだ。でも私は飛行機に乗って東京へ行かなければならない。日本で一番面積が広い、ここ北海道から日本で一番人口の多い大都市――東京へ。
婚約者の彼がいる東京へ。
いや……。
私は空港内を一人歩きながら被りを振った。知らず知らずのうちに唇を強く噛んでしまう。
正確には婚約者だった彼がいる東京へ。
けれどいまだに大好きなそんな彼の元へ会いに私は行くのだ。彼に会ったって透明人間から元に戻れる保証はどこにもない。しかしどうしようもなく、私は彼に会いたかったのだ。
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