インビジブルガール

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 ここでも搭乗券のチェックは行われるのだが、私は機械にすら見捨てられた透明人間。搭乗券を持っていなかったけれど、何の問題もなかった。  ふわふわとスキップしたくなるような気分で、足取りも軽やかに私は東京行きの搭乗口ナンバーのスペースまで来た。搭乗口待合室には登場時間までくつろげるように一人掛けのソファが規則的にズラッと並んでいる。私はそのうちの一脚に腰を降ろした。  前回はクリスマス・イブ、しかも年末で土曜日ということもあり混んでいたため、見知らぬ人と隣同士で座らなければならず窮屈な思いをした。けれど今は六月の、しかも平日。だから空いていて、他人と一脚以上距離をおいて座ることができた。 「アハハ」  私は声に出して笑った。どうせ私の声は誰にも聞こえないのだから構わない。  自分の口から出た乾いた笑いから、きっと頬が引きつった自嘲めいたものになってしまっているだろうことは鏡を見なくとも容易に想像がついた。  私の婚約者だった彼――恵太は去年の春から一年間、仕事の関係で東京に出張していた。離れ離れになるのが私はすごく嫌だったけれど、一年間だけ、それに仕事なのだから仕方ないと割り切っていた。
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