第一話  「ヒトデナシ」

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ヒトデナシと言われた。 そもそも僕には、誰もが持つような慈悲や哀れみや愛みたいな心はない。 それをヒトデナシと言うならそうに違いない。 しかし、人と云う物が歴史に残した事実はどうであろうか。人であってからこそ成し得た極悪非道の数々…。虐殺や拷問や虐待に考えうる以上の狂気をもってして人類は歴史に爪痕を残してきた。多分これからも行うであろう。 いや話を僕に戻そう、僕には見る目もなければ、聞く耳もない。そうひどい盲目であり、人の言葉になんか何の作用もしない。かといって頭脳があるわけでもなく、影響力の欠片もない。 無い無いだらけが僕なんだ。ただ君よりは欠点もないはずだよ。 だって僕は頭も体も無いし。まぁ平たく言うなら存在もしていない。 やっぱりヒトデナシなんだろうなぁ。痛む胸もないが、実は語る力もない。けどたまには思い出して欲しい。 電気椅子にある僕の肉体からプスプスと煙りが上がる。
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