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「んあっ…」
抜かれた指の代わりに、あてがわれた熱。
背後から、耳の裏に感じる先生の息が荒くて。
「入るよ」
「んっ ぁ―――」
返事も聞かずに押し入る、さっきまで入ってた指とは違う、圧倒的な質量で。
俺の中で、先生である部分が増えるにつれ背が仰け反る。
それを背中から覆い被さったまま押さえつける、先生の両手がシーツを握り締める俺の手を包んだ。
―――ぜんぶ、おくのほうまで。
がくがくと腰が震える。
背中が攣ったまま元に戻らず、喉のあたりがひくひくした。
「動いていい?」
「あっ や。待っ…て」
浅い息を繰り返しながら、かろうじて静止する。
って、この状況で静止したままってのも辛くて。
意識して深く息を吐き出す動作を数度繰り返すと、先生の唇が宥めるような優しさで項に触れた。
「これ」
首の後ろで、声がする。
包まれた右手の、手のひらに何か硬質のものが触れて握らされた。
―――?
汗や潤んだ視界ではっきり見えない。
開いた手の中には、リボンが結んである鍵があり、でこぼこ面を指で確かめた。
「君に、バレンタイン」
「……ぇ。えっ?!」
……っつか、
四つん這いで押さえつけられてるこの状況で、渡すか普通?
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