極甘バレンタイン

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「合鍵……ここの?」 「そう」 指先で鍵をくるりと回して確かめる、その手に添うように俺より少し大きな手と、綺麗な指が見える。 項に寄せていた唇が首筋を這い上がり、耳元を擽りながら、言った。 「一緒に住む?」 「んぁっ…ちょっ…」 耳孔の中で声がして、ぞくぞく、と背を快感が走り、手の中に鍵を握り込む。 大事なことを、言われたはず。だからちゃんと考えたいのに、いちいち刺激しながら話しやがるから…… っつーかなんで。 なんでいきなり。 「なんでこの体勢で渡すんだよっ」 「ん?苦しそうだったから。嬉しくて力抜けるかと思って」 「なん…ぁああっ」 先生が急に動いて、折角埋まっていたものをギリギリまで引き抜く。 意識まで持って行かれそうになる、次の瞬間には寂しささえ感じる喪失感。 「うちにおいで」 越しておいで。 この先が、欲しかったら。 「う………っ」 交換条件ですらない、脅迫まがいのバレンタイン。 口の中に溜まった唾液を、ごくりと飲み込んで。 頷くしか、出来ない。 「よくできました」 先生もまた、ごくりと喉を鳴らし、含み笑いすら聞こえそう。 ひと息に奥まで腰を打ち付けた。
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