306人が本棚に入れています
本棚に追加
「甘っ。何だこれ」
「………そか?」
隣でまた眉を顰めるのをスルーして、俺もカップに口をつけた。
うわっ、甘っ!
普通のチョコより甘く感じるのは、ホットで飲むからだろうか。
思った以上の糖度が口の中に広がって、喉に引っかかった。
まぁ、でも。
これで目的達成。
センセーが、渋い顔をしながらでも俺のチョコを食べてくれるのは恒例のこと。
どうしても朝一に渡したかったんだよな。
どうせ病院に行ったら看護婦や患者がチョコを持ってやってくるから。
「……ああ、そうか」
一瞬カレンダーに目を走らせ、センセーがふっと笑ってまたホットチョコを一口飲んだ。
ようやく今日がバレンタインだと気づいてくれたみたいで。
笑った横顔が、いつもよりやわらかい。
急に感じた羞恥心に目をそらしてホットチョコに集中する。
センセーは。
鬼畜だし普段無表情だし、すぐ人をからかうけど。
時々、見える優しい目に落ちて。堕ちて。
文字通り「食われた」のも3年前のバレンタインだった。
あの日、センセーは俺の傷に一つずつ口付けて、上塗りするように噛みついた。 服も中途半端に脱がされたまま、身体中隅々までセンセーの指が触れて。
あろうことか、目の前にあった超音波につかう医療用のローションで……
最初のコメントを投稿しよう!