0人が本棚に入れています
本棚に追加
斜陽が美しく入り込む頃、部活終了間際の美術室にて……。
大吉は、描く風景ーー昼間の街道の中にある菓子屋ーーを見てふと、思い出した。
「あ、バレンタインか今日。忘れていた」
「今更気づいたの?というか、日頃何も考え無しに生きてる証拠ねそれは」
棘のある返しをしてきたのは、松田。2人しかいない美術部員のうちの一人であった。
「ぐ、うっせーぞ」
「かわいそうに、お友達すらいないのね」
「俺をヘンテコ論理でバカにするしか楽しみなさそうなお前に言われたかないね」
「困ったわ。それは、反論できないわね……」
「なんかそれ、深く傷ついた」
……キャンバスに絵の具を乗せる音だけが残された。
大吉という人物は、嫌われないが好かれないタイプの人間であった。どこか他人とは感性のズレがあり馴染めないのだが、優しい性格の故に同級生からは便利に使われている。故に、友人はいない。
大吉は、ふと隣の美少女を見た。
松田。常にプライドが高く他人を見下しがち。能力をあからさまに誇示しがちと見られ、男女問わず嫌われる。友達はいないようだ。しかし、そのスペックの高さから、便利に使われることもしばしば。
どうして、こんなに悲しい二人が同じ部活に集まってしまったのか……。そして、そう感じた瞬間に、冗談半分で大吉はこんなことを言っていた。
最初のコメントを投稿しよう!