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お菓子のせいか、少しやる気を取り戻す。どうせなら、元々の絵とは全く違う感じにしてしまおうか。その方が楽しく描けそうた。
作業も大分進むようになり、気付けば7時過ぎだ。
花菜は後片付けをして職員室に鍵を返しに行った。
玄関に続く階段を下りていくと、男子生徒が下駄箱に寄りかかりケータイをいじっている。
ふと男子生徒の顔に目が行き、花菜の動きが止まった。
成宮充だ。
サッカー部も終わったのだろう。誰か待っているのだろうか。
とりあえず、声をかけてお菓子のお礼を言おうか。
花菜が口を開きかけたその時、成宮充もこちらを見る。
こちらに気付くと、持っていたケータイを閉じてポケットに入れ、近付いてくる。
「矢澤さん、待ってたんだ」
「え?!」
「送ってくよ」
当然のように言い、下駄箱からスニーカーを取る。
「ど、どおして?」
歩き出している彼の後を慌てて後ろについていく。
「田口が……」
「田口?」
「あの絵は学祭ので期限があるから、放課後遅くまで残ってやるらしいって聞いて…」
「あ……」
「遅い日は、送るよ」
並んで歩き出すが、昨日とは印象が変わる。落ち着いた雰囲気だ。あの時は彼も焦っていたし、これが地なのかもしれない。あまり喋らないと早智が話していたのを思い出す。
「あ、あのね……。田口からお菓子もらった。ありがとう」
「いや……。好きなのわかんなかったから、テキトーに選んだんだけど」
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