第2話

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「矢澤さん、地下鉄A駅だよね?駅から近いの?」 「うん、歩いて15分ぐらいだけど……なんで知ってるの?」 「田口と中学一緒なんだろ?西中はあそこの駅多いから」 また田口情報か。同じ部活だし、仲がよいのかもしれない。 話すうち、成宮充のウチは花菜のウチと一駅分の距離で、意外と近い事がわかる。 電車を一緒に待って、隣に座る。近くにいると微かに制汗剤の香りがした。花菜は自分から部室のシンナーの臭いがしないか心配になる。 絶対に明日からデオドラントウォーター持って来よう。 駅に降りると、問題が発生した。 成宮充も一緒に降りるから、おかしいとは思っていた。 バイバイと言いかけたが、先に降りるよう促され、いつの間にか一緒に降りていた。 「なんでだよ」 「だから、いいってば」 「だから、なんで嫌なんだよ」 「悪いからかな?」 「別に悪くないよ。ほら、行くよ。ウチどっち?」 花菜は頭を抱えたくなる。 このやりとりを何度か繰り返しているが、成宮充はひく様子がない。意外と強引な性格らしい。 家まで送られるのは困る。お母さんも仕事から帰っているし、見られると面倒だ。運よく見つからなくても、お隣さんにでも見られたら、結局はお母さんに伝わってしまう。 「成宮クン、ウチに帰るの遅くなっちゃうし、また駅まで戻るなんて面倒でしょ?」 「一駅分だし、走っていくよ。ロードワークにもなるし。だいたい、夜危ないから送ってんのに、ここで帰したら意味なくない?」 花菜は言葉につまる。 送ってもらうのを了承したのだし、確かにその通りだ。 成宮充はにやっとする。 「はい、決まり。行くよ」
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