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成宮充は頭をかいた。
「でもさ、一緒に歩いてて思ったけど、人気ない道多かったしさ。俺が気になるんだよな」
「……」
「送らせてよ」
「……うん」
「それじゃ、また明日な」
くしゃっと顔を崩して笑うと、成宮充は走っていく。
今の笑顔は反則だ。
まだ会って2日だ。こんな気持ちになるなんて、あり得ない。
心がざわつく。
勘違いしちゃダメだ。責任感じてよくしてくれてるだけなんだから。
絵が仕上がれば、全く接点なんかない。後でつらいだけだ。
こんな時は、カフェオレでも飲みながら、お笑い番組でも見て忘れるに限る。
花菜はカフェオレを用意してリビングでテレビをつける。
向かいのソファでお母さんが洗濯物をたたみながらテレビを見ていた。
「やっぱりうっすら残っちゃったね」
お母さんがパーカーを広げた。お腹のあたりが薄くブルーになっている。洗濯物をたたんでいて気付いたらしい。
「うん……」
「気に入ってたのに、残念ねー」
「……そうだね」
「いつまで遅くなる予定なの?女の子なんだから、あんまり遅くなると危ないわよ」
「……一週間ぐらい、かな?」
「彼氏でもいたら、送ってもらえるのにねー。お母さん、仕事早い日はクルマで迎えに行こうか?」
「大丈夫!美妃も一緒だから!」
「美妃ちゃんなら、一緒に送ってあげるわよ」
美妃とは小学校から一緒だから、お母さんも当然知っている。
自分の言った話に首をしめられる事になり、慌てる。
「先輩とかもいるし、今みんな残ってるから」
「……ふーん、わかったわ」
お母さんがにやにやしながら洗濯物を持ってリビングを出て行く。
花菜はクッションに顔を埋めた。
勘づかれたかもしれない。男の子と帰ってるとか考えているかもしれない。
花菜は溜め息をついた。
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