第1話

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「キャプテン!ケガはないみたいですけど、一応保健室に……思い切り当てちゃたし。俺、少し練習ぬけて一緒に…」 「大丈夫!大丈夫です!この絵も気にしないで下さい!じゃあ!」 私は言いかけた彼の言葉をさえぎった。 絶対に大袈裟だし、何より今初めて会った男子と一緒に保健室に行くなんて緊張する。 花菜は絵の具やらパレットをかき集め、2人に礼をした後は小走りでその場から離れる。 後ろから「ちょっと」というナリと呼ばれた彼の声がしたけど、聞こえないフリをした。 美術室に戻ると、美妃ともう1人の1年生部員である田中光希(タナカ コウキ)が驚いた表情で振り返る。 「花菜!どしたの?!転んだ?」 「転んでないけど…なんで?」 「だって、パーカースゴいことになってるよ!」 美妃の視線の先を見て納得した。 私の白いパーカーには、くっきりとインディゴブルーの絵の具がついていた。 花菜は慌てて絵の具を置き、パーカーを水道でこする。 真っ白だから、完全には無理だ。気に入ってたのに。 今日はついてない。 先程の彼の顔を思い浮かべる。 同級生だろうか。見覚えがないから、上級生かもしれない。 見た目も爽やかな感じで、見るからにモテそうだった。 でも、自分なんか明日には忘れられているだろうな。 そう思っていた。
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