第2話

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早智が吹き出した。 「花菜ってば、初対面の奴にまで見抜かれてるね」 花菜は頬を染めて早智を軽く睨む。 田口が面白がるように頷いた。 「まぁ、確かに、成宮が来たら目立つだろうな」 「なんで?」 花菜と美妃がほぼ同時に聞いた。 「あいつモテるもん」 田口の答えに早智が同意する。 「サッカー部の1年では一番人気だよね?成宮充(ナリミヤ ミツル)かー。でも、あんま喋んない奴だから、こんなお詫びの仕方するなんて意外ー。美妃知らなかったの?普段からサッカー部チェックしてるのに」 「私は歳上限定だもん」 「だれだれ、なに先輩だよ。サッカー部なんだろ」 「田口なんかに言ったら、今日中に部員全員に広まるもん。ぜーったい教えない」 文句を言いながらも気になるのか、食い下がる田口の様子に笑いながら、花菜は袋を見つめた。 彼の事でわかったのは、成宮充という名前と、そんなモテ男子とのやり取りはこれっきりで、恐らくもう関わりもないだろうという事。 袋の中身を見ると、チョコやカフェオレと、甘めのものがいくつか入っていた。 わざわざ自分に買ってくれたんだと思うと、嬉しくなってにやけてしまいそうだ。 放課後、部室でひたすら作業する。 完成間近まで進めた題材のせいか、いまいち乗り気にならず、なかなか思うようにいかない。 花菜は溜め息をついて鉛筆を置くと、ケータイを見た。 「6時かー……。お腹すいたー」 お母さんが仕事から帰って来る時間帯だが、部活で遅くなる事は昨日から伝えている。 他の部員もすでに帰ってしまい、部室には花菜ひとりだ。 そういえば、成宮からもらったお菓子があった。もう誰もいないし、食べながらやってしまおう。
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