序章「親と学校と俺と。」

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濡れた制服を乾かす為に、屋上へ出た。 本当は、そんな理由ではないのに。 胸くらいの高さのフェンスに掴まり、思った。 ……もう……消えたい。 いなくなりたい。 これ以上は身も心ももたない。 ん? 待てよ……? 俺が消えれば、奴等は一生背負い続ける事になる。 遺書を書けば、捜査の上で、有力な情報となる。 そして、奴等は……捕まる。 それって復讐成功じゃないか? クラス全員に疑いを掛けさせ、教師までも被疑者。 こんな最高な事ってない。 早速胸ポケットからメモ帳とペンを取り出し、真実を綴る。 気付けば、俺の顔は、それは悪魔のように歪んでいた。 もうその顔は、元に戻ることはない。 慌ただしくペンを進め、少し妥協したように溜息を付くと、ペンを投げた。 「だいたいこんなもんか……フッ……実に滑稽だな……」 強く唇を結び直し、フェンスをよじ登る。 生暖かい風は、させまいと言わんばかりに、正反対に吹き付ける。
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