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その
夜。
「……という訳で、明日、未の刻に執行する。
最後に望みはあるかい?」
劉備は優しく語りかける。
「ううう……。
望み……ねぇ。」
孫尚香は考える。
「無理することはないんだ。
ただ……。
僅かな時間だったが、楽しかった。」
劉備がそう告げると。
「それを言わないで下さいよ。
死ぬのが怖くなっちゃうから……。」
「なら、死なないで欲しいが、そうもいくまい。」
「そう。
陛下は、私のことを好いてたのね…。」
「まぁ。
家族だろ?」
「それもそうか…。
私も楽しかったです。
父はあの性分ですから、私を男の子と扱いました。
母も兄貴達も……。
だけど、陛下は違いました。
一人の女として見てくれました。
嬉しかった……。」
ジ~ンと来た劉備。
「尚香……。」
涙ぐむ。
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