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悪びれる様子もなく壮燗が答える。
お前の相手は疲れると言いたそうな鳴弥は、新入りの響八の方を見た。
「君は確か…入隊試験の響八だったな」
「はい! 鳴弥隊長、よろしくお願いします! 」
礼儀を欠かさず頭を下げる響八とは正反対の性格の壮燗を見比べ、鳴弥は溜め息混じりに背を向ける。
妖を討つ為の討伐隊の長、鳴弥の方に鬼の中では珍しい年長者らしき鬼が両腕を振る。
目と鼻の先に立つ鬼だが、図体は小柄な響八を二人分足したぐらいの恵まれた体格をしている。
「いやー、丹生爺。今日もすこぶる元気だね」
「…嶺禄(りょうろく)爺は今回も先陣を切ってもらう。壮燗は後方援護」
細かな指示を振る鳴弥だが、悠々自適な壮燗はにんまりと笑うだけだ。
いまいち指示に従うつもりはないらしい。
「後方援護は僕の他にもいるって顔してるね。鳴弥」
「一応、警護部隊の櫟(くぬぎ)と薫風(くんぷう)も控えている」
「わ、なに? 総当たり戦じゃないか」
これには驚いたのか、壮燗は目を瞬いた。
敵が潜む羅生門を細い目で睨み、壮燗が疑わしそうに首を捻る。
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