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その一方、響八は戦場から離れた所で妖との戦いを傍観していた。
「戦いたいのか? 響八」
戦場を眺める響八に向かって、討伐隊の長である鳴弥が声をかける。
一瞬、響八の中に巡る赤い血潮が加速した。
しかし、彼は謙虚な気持ちを前提に落ち着き払った声で返した。
「鳴弥隊長、俺は討伐隊に入隊したてで足を引っ張る事は確かです」
「一応入隊するまでに自己流で訓練はつけていたんだろう? 」
「ええ…まぁ…」
討伐隊を指揮する鳴弥が、何を考えているのか分からない響八は言葉を濁した。
何か良からぬ事でも考えているのだろう。
鳴弥の笑い顔は響八から見てそう感じた。
「どうせ壮燗の事だ。試験官の仕事も手を抜いただろう。響八、目を凝らせ」
「え、はい! 」
「壮燗を見つけ出して追いかけろ」
目を瞬いて響八は固まってしまった。
何だかんだで壮燗に連れてこられたものの、危険が及ぶという理由で初陣はお預けになったのだ。
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