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「戦場に出ても…良いんですか? 」
胸の高鳴りを抑えて、響八は目を輝かせた。
それと同時に響八は言い知れぬ恐怖が、どこからともなく忍び寄るのを感じた。
挑戦と期待、一歩間違えば命の保証はない。
それを理解しているからこその体の震えだと、鳴弥が彼の背中を押す。
「分かっているなら簡単にはやられない、だろう。壮燗の元に行って討伐隊の伊呂波を習いに行け」
「…はい! 」
試験の時にも使用した刀を腰に携えて、響八は駆け出した。
妖と鬼とがひしめき合う戦場には、鬼が打ち倒した妖の思念が辺りに立ち込める。
その場の空気を深く吸い込めば、体の芯を毒されてしまいそうだ。
響八は顔をしかめて壮燗の姿を捜した。
しばらく走っていると響八の視界に、鞘を使用して妖を薙ぎ倒してゆく鬼が映える。
「あ、壮燗さん! 」
「あれ? やっぱり来たんだ。あれでしょ、鳴弥が余計な事吹き込むんだから」
攻撃の手を休める壮燗が、やって来た響八を一目見て口角を上げた。
敵である妖に四方を囲まれても、壮燗の顔には余裕が生まれる。
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