・半鬼の初陣・

7/18
前へ
/284ページ
次へ
「戦場に出ても…良いんですか? 」  胸の高鳴りを抑えて、響八は目を輝かせた。  それと同時に響八は言い知れぬ恐怖が、どこからともなく忍び寄るのを感じた。  挑戦と期待、一歩間違えば命の保証はない。  それを理解しているからこその体の震えだと、鳴弥が彼の背中を押す。 「分かっているなら簡単にはやられない、だろう。壮燗の元に行って討伐隊の伊呂波を習いに行け」 「…はい! 」  試験の時にも使用した刀を腰に携えて、響八は駆け出した。  妖と鬼とがひしめき合う戦場には、鬼が打ち倒した妖の思念が辺りに立ち込める。  その場の空気を深く吸い込めば、体の芯を毒されてしまいそうだ。  響八は顔をしかめて壮燗の姿を捜した。  しばらく走っていると響八の視界に、鞘を使用して妖を薙ぎ倒してゆく鬼が映える。 「あ、壮燗さん! 」 「あれ? やっぱり来たんだ。あれでしょ、鳴弥が余計な事吹き込むんだから」  攻撃の手を休める壮燗が、やって来た響八を一目見て口角を上げた。  敵である妖に四方を囲まれても、壮燗の顔には余裕が生まれる。
/284ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加