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「食らえぇっ!! 」
ぎりぎりまで近付いて青年は刀を力任せに振るった。
刀は明らかに隙を突かれた対象の腕を切り裂く。
その瞬間から、対象の敵である試験官は脱兎の如く逃げ出したのだ。
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それで今に至る。
試験官は合格した筈の青年から距離を取ろうと、地面を蹴る力を強くする。
対象と差を空けられ、青年も地面を蹴る力を強くして追い付こうと試みた。
せっかく討伐隊の試験に合格したのに、これで逃げられたら意味がない。
どれだけ追いかけても中々その差は埋まらない。
焦燥感に駆られる青年の方を、突如として前方を疾走していた鬼が振り向く。
『呪縛せよ』
距離を離すだけでは飽き足らず、前方の試験官は青年に向けて何かを取り出して放つ。
試験官の手から放たれたそれは『恤符』(じゅつふ)と呼ばれる特殊な符だった。
複数の黒い触手が、うねりながら追いかける青年を襲い掛かる。
これに驚いた青年は反応が鈍り、一本の触手に腕を取られた。
後はもうもがいても足掻いても、一度絡み付いた触手は青年のもう片方の腕、足を、胴体を拘束した。
四肢を触手に捕らわれた青年の前に、腕に傷を負わされた試験官が近寄った。
傷のない腕の方に青年が持つ刀とは異なる刀を携えている。
「誰だ。お前」
そう問い掛けられても青年は答える事が出来なかった。
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