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目配せで辺りの状況を確認するが、青年の身の回りで助けてくれる者はない。
痺れを切らした試験官は特殊な刀を手首だけで振るう。
特殊な繊維で出来た鋼糸の先に括り付けられてある苦無が舞い、青年の着けていた鬼の面が真っ二つに割れた。
露わになった素顔を見せる青年は、驚きで目を見開いた。
「え…? 」
からん、と小さな音を立てて割れた鬼の面が落ちた。しばらく待って試験官の鬼は青年を睨み付ける。
「で、何か用か? こんな大人数で押し寄せてきて」
試験官はほんの少しだけ視線を外し、迷惑そうな目つきで近くに木々の根本に倒れている他の志願者を睨んだ。
見る限り試験官に痛手を与えたのは青年しか居ないようだった。
「いや、これは、その…」
青年は苦笑いをして自由が利く首を動かして周囲を見渡す。
どうか、まだ無事である仲間が助けてくれる事を願う青年に、望みを断ち切るように鬼は刀を振るう。
ひゅんと空気を切り裂く苦無は青年の顔の真横に突き刺さる。
命がないと感じた青年の顔から見る見る血の気が引く。
冷や汗を流して、乾いた口から青年は恐る恐る口を開いた。
「これって、試験ですよね? 」
「…は? 」
討伐隊の試験官だと思っていた鬼は、首を傾げて困ったような仕草をする。
しかしすぐに鬼は振り向くと同時に大振りに腕を振るった。
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