23人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい。あまり他人の前ではそういうことするなよ」
咎められても尚平然としている壮燗は聞こえない振りをする。
先程から状況が全く頭に入ってこない青年に向かって壮燗は、恤符の効果が切れたことを話した。
「はい、解けた。ではでは、試験はこれにて終了! 」
「あっ。俺は、落ちました、よね…」
落胆する表情で重々しく零れ落ちた言葉を呟く青年は、壮燗の手を借りながら立ち上がった。
「おい、その前に壮燗。説明しろ」
青年が試験官と間違えて斬りかかった鬼が説明を求めると、申し訳無さそうに青年は顔を逸らした。
事の発端となった壮燗が、ここで初めて相手の名前を苦笑しながら呼んだ。
「黎嵐(れいらん)、今月の初仕事でさっ。試験官してたんだけど…」
「ど? 」
「僕が相手だとあれだからさ。いい相手になる人がいないかなーって捜してたら、ちょーど任務から帰還してる黎を見かけて、これしかないってね」
雲のように掴み所がない壮燗の言葉に、ようやく事の真相が掴めた黎嵐は呆れながら言い放った。
「ほう。で、俺がいきなり襲われることになった、と」
「はい、そうです。御免なさい」
ぺこりと礼儀正しく頭を下げて謝る壮燗だが、その謝罪に誠心誠意を感じる事が出来ない黎嵐は雷を落とす。
最初のコメントを投稿しよう!