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飄々と弾むように歩く壮燗は、隣りに立つ響八の腕を強引に引っ張った。
唖然としている鬼は負傷している黎嵐と、妖討伐に向かおうとする壮燗を交互に見る。
「お、おいおい、嘘だろ。勘弁してくれよ。壮燗さん、だって…」
「響八は討伐隊の試験に合格した。それでいいでしょ? ね、閃騎(せんき)」
首を後ろに回して笑いかけた真意の計れない壮燗に、閃騎と呼ばれた鬼は眉間に深い皺を刻む。
「責任は誰が取るんだ!? 壮燗さん! 」
「ん? 鳴弥じゃないの? 」
いい加減な物言いで答える壮燗に、深緑色の髪を生やした閃騎は歯を軋ませる。
堪忍袋の緒が今にも切れてしまいそうな閃騎は、噛み付くような口調で状況を説明した。
「寅の方角に『羅生門』を確認! 先に隊長の鳴弥さんを筆頭に各隊も出撃態勢を整えている! 」
「ふーん、了解」
軽く聞き流す程度にしか耳を傾けない壮燗に、引きずられる形の響八が遠く離れてゆく黎嵐に目をやる。
心配する素振りの響八に向かって壮燗は口角を上げた。
「黎は放っといて大丈夫。腕のいいお医者様が診てくれるから」
「あ、はい…」
他の事に集中を割くなと遠回しに言われた響八は、これから妖を討伐する新米の兵として気を引き締めた。
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