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ヨウの一連の一人騒ぎを、冷静な無表情で見守りながら、落ち着いたのを見計らうと、ニコリ、と笑って、近くにあった椅子に長い足を組んで腰掛けるリー。
海賊船をまとめる立場にある彼にとっては、この程度のことは同様に値しない。
指をくみ、顎を乗せて相手を眺め、暫く無言でいたが、溜め息にのせるように吐息混じりに「茉莉花烏龍茶を。」と答える。
「...かしこまり~」
どうも掴み所の無く、おそらく性格が真逆っぽいリーに皮肉を込めて適当な丁寧さで答えると、戸棚から茶葉類を取り出して、ティーポットへ入れて湯を注ぎ始める。
そんなヨウに、態とらしい笑みを浮かべて、リーは「夜中まで料理だなんて、精が出ますねぇ」と言う。
リーは、この男にはなんの感情も抱いてはいない。
嫌ったり、好いたりもしていない。
しかし、この料理長としての自覚にかけるような気の抜けた態度は、副船長としては気に障り、つい、言葉に棘が出てしまう。
一方、ヨウの方は、労いに似た言葉は苦手なようで煙たがるように眉を寄せていた。
日中は船員達の騒々しさに繊細な技術を用いるものは作れないと深く息を吐きながら、小皿に艶のある丸いチョコレートをコロコロと5、6個のせると、ちょうど蒸らし上がった茶と共にリーに差し出す。
「うるせーな
日中は、煩すぎてできねーの...」
「確かに...、
うちの連中は、元気がよすぎて困りますね...。」
ヨウのぼやきに頷き、困ったと言う言葉とは裏腹に、先程の皮肉とは違い、本心からの小さな笑みを浮かべると、すぐに真顔に戻りながら仲間の話をする。
そんなリーの様子は、ヨウにとっては意外だった。いつも、すました顔をしてお高く止まったポーカーフェイス。正直、印象はあまりよくない。
顔の造りは申し分ないのだが、その性格は己の好くところではない。
そんな鉄面皮も普通に笑うことができたのかと驚いた。
しかし、クルーが健康なのは悪いことじゃない。
愉快そうに肩を揺らして笑うと、優雅にお洒落な飲み物を頂く趣味はないため、右手に冷えたビール瓶をぶら下げて、カウンターのようになったキッチンから出た。
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