始まりの夜

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チョコレートを出されたリーはというと、そんなヨウの様子を横目に見つつも、目の前の艶やかな実を一つ摘まみ上げて鼻に近付け、スン、と香りを楽しむと同時に毒物の気配がないことを確かめると、「いただきます」と呟いてから口の中に入れた。 トロリ、と舌の上で品よく溶け出すチョコレートは、目の前の料理長の料理の腕を示す。 この腕だけは認めないわけにはいかない、と内心ため息を付きながらも、リーは、本題にはいることにした。 「明日までに、料理部で必要なもののリストを提出してください。 目安としては、1ヶ月分です。」 「明日まで? なんか書くもんね?」 指示された買い物リストは既に確認済みなのか、忘れぬうちにメモしておきたいと言うヨウは、リーの座る席の机の上にドカッと行儀悪く腰掛け、常に常備しているだろう筆記用具を貸すように促す。
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