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希春がタクシーで帰宅すると柚多夏が既に帰宅していた。
シャワーの音がバスルームから聞こえて来た。
柚多夏は希春が居なくても使ったお皿やコップをちゃんと使ったら直ぐに洗っておく性格だと思っていた。
…違ったんだね…
シンクの中に幾つか置いてあった。
…今まで、私が帰って来るまでに急いで洗ってたのかな?疲れてるのに、気を使ってくれていたんだ…
バスルームから柚多夏が出て来た。
希春がいる事にびっくりしていた。
『ただいま』
『お帰り。どうしたの?』
『うん。私もシャワーを浴びてくるね』
バスルームから希春が出てくると
ビールを飲みながらテレビを見ていた柚多夏が振り返り
『何かあった?』
と聞いた
『うん』
希春が答えた。
『どうした?』
柚多夏はさっきのBARでの出来事が無かったかの様にいつもの優しい柚多夏だった。
『柚多夏くんは疲れてない?』
と希春はソファーに座る柚多夏の前にあるテーブルの横に座り両腕を軽くテーブルの上に乗せ、左手薬指の結婚指輪を見つめながら聞いた。
『なんで?』
柚多夏は希春の様子がおかしい事に気付いた様で言葉がいつもより強くなった。
『疲れているなら話すのは明日にしようと思って、明日も仕事でしょ?』
『うん、仕事。でも午後から行くからさ。話、気になるから言って』
と希春が何も知らないと思っている柚多夏が言った。
『じゃあ、隠し事は嫌だから話すね』
…希春は深呼吸してから話し始めた。
『先週、横浜で仕事をしている時に電話が来たの。
電話の相手は知らない人だった。毎週土曜日に柚多夏くんがその人と合う為にあるBARに行くといってたよ。その人は山野って名乗って、』
柚多夏の顔が少し強張った。
『なんで、直ぐに言わなかったの?』
柚多夏は冷静な声で聞いた。
希春は柚多夏の質問には答えず話を続けた。
『それで、今日確かめに行ったの。さっきまであのBARにいたんだよ』
柚多夏は言葉をなくした。
『電話の人の話は本当だったよ』
希春が話を続ける。
『びっくりしたよ。柚多夏くんの両側に美女がいて…私の旦那さまはモテモテなんだね…』
柚多夏が黙ったままだから、
希春は話を続けた。
『で、もっと驚いたのは、…やっぱり佐城係長がお母さんの不倫相手だったんだって、若い女の子が言ってたのが聞こえて…』
柚多夏が希春を見た。
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