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希春も柚多夏を見た。
『私が聞きたい事は、本当に毎週土曜日に柚多夏くんはあの場所で山野さんって人に会いに行ってるの?』
『会いに行ってる訳じゃないよ』
『なんで、あそこに居たの?どうして、あのBARに行ってるの?
土曜日は仕事の後に会社の人と飲んでるのかと思ってた』
柚多夏が話し始めた。
『10年くらい前に付き合っていた。数ヶ月の短い期間だった。彼女の旦那には好きな人がいて…。彼女は寂しかったんだと思う。
でも、彼女は娘の為に家族のもとに戻った。
最初は彼女に会う為にあのBARに行ってたけど、彼女は来なかったよ。
なんとなく習慣になっていただけだよ。彼女の事は直ぐに忘れたよ。元々、割り切ってた付き合いだったから…
それが、希春にプロポーズする少し前に彼女から離婚した事を聞いた。
横浜にも1人で行く店がある…
そこに彼女が来て再会したけど、別れてから会社以外で会ったのはその日と今日だけだよ。彼女とはとっくに終わってる。希春が心配するような事は無いよ』
柚多夏が希春の左手を握った。
柚多夏の手を振り払えたらいいのに…でも柚多夏の温もりを失いたくなかった。
『…』
『信じて、もう行かないから』
柚多夏は嘘をついてないと目を見たら分かった。
希春を愛してくれているのも伝わって来た。
『分かった。信じるよ。でも、もう絶対に行かないでね。
私も横浜には行かないから…
仕事ばっかりの柚多夏くんを待ってるのは寂しかったけど、ここで仕事しながら柚多夏くんの帰りを待ってる。仕事中の私は酷い姿になってイライラしてるかもしれないけど、そんな私を見て驚くかもしれないけど…』
『大丈夫。ちょっと見るのは怖いけど、そのうち慣れる。俺もごめんね、寂しくさせて』
柚多夏が希春を抱きしめた。
『柚多夏くんの胸の中が好きだよ。ここは安心する』
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