episode 97 同類

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「はい。すぐにお部屋にお通しするようにと……」 女の子が受話器を置くや 「天宮様――ご案内致します」 すぐに年配のスタッフが現れて 僕をエレベーターまで誘う。 そうだろう。 いつ来たって彼が僕を拒むもんか。 むしろ突然の訪問は 思いがけないご馳走――。 「こちらでございます」 ホテルマンが去ると 「姫百合の間だって。らしい部屋」 一人ほくそ笑みながら ドアをノックする。 「和樹……」 「やあ、スイート」 間もなく 顔をのぞかせた美しい僕の恋人。 「そんな恰好で、一体どうしたの……?」 どんな経緯で僕がここにいるのか まったく解せない様子で あたりをきょろきょろと見回している。 「そんな恰好はないだろう?一応フェンディのシャツだよ」 犯されかけて しわくちゃなだけで――。 「君こそなんだい?こんな時間まできっちり第一ボタンまで留めちゃってさ。まだ仕事?」 彼がセクシーな細い眼鏡をかけるのは 書類に目を通すときだけ――。 僕は部屋の中に滑り込むと同時 「ねえ、遊ぼう」 それこそ百合の首のごとく美しい喉元を覆い隠す――シャツのボタンに手をかけた。
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