episode 77  雪の王子の法悦

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「いいよ――たくさんどうぞ」 それは奥歯まで震えるほどの 「ンッ……アァァァァッ!!」 慟哭にも似た絶頂。 頬は薔薇色の血色を取り戻し 身体は歓喜に満ちていた。 「お兄様――フランスじゃエクスタシーの瞬間の事『小さな死』って呼ぶんだって――九条さんが言ってた」 薫は僕相手に果てた事実を受け入れたくないのか。 顔を背けて固く瞳を閉じていた。 「だから僕――死にたいお兄様を何度も何度も殺してあげようと思うの」 僕もすっかり恍惚だった――。 そしてもう一人 この退廃の絵巻物に魂を抜かれた美青年――。 「いいよ、次は混ざっても」 僕は猫のように身体をしならせ 彼をベッドに手招きした。 もう薫もやめろとは言わなかった。 その代り 無言で僕の身体を抱きすくめる男を 放心したままの 可愛らしい鳶色の瞳で見つめていた。 「いいんだよ。とことんまで堕ちたって。僕らは若くて美しい。だから生きてるだけでいいんだ――」 椎名さんの腕の中 僕はうっとりと背中を反らせ 失楽園の入口に立ち尽くす薫に笑いかけた。
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