1084人が本棚に入れています
本棚に追加
/348ページ
「いいよ――たくさんどうぞ」
それは奥歯まで震えるほどの
「ンッ……アァァァァッ!!」
慟哭にも似た絶頂。
頬は薔薇色の血色を取り戻し
身体は歓喜に満ちていた。
「お兄様――フランスじゃエクスタシーの瞬間の事『小さな死』って呼ぶんだって――九条さんが言ってた」
薫は僕相手に果てた事実を受け入れたくないのか。
顔を背けて固く瞳を閉じていた。
「だから僕――死にたいお兄様を何度も何度も殺してあげようと思うの」
僕もすっかり恍惚だった――。
そしてもう一人
この退廃の絵巻物に魂を抜かれた美青年――。
「いいよ、次は混ざっても」
僕は猫のように身体をしならせ
彼をベッドに手招きした。
もう薫もやめろとは言わなかった。
その代り
無言で僕の身体を抱きすくめる男を
放心したままの
可愛らしい鳶色の瞳で見つめていた。
「いいんだよ。とことんまで堕ちたって。僕らは若くて美しい。だから生きてるだけでいいんだ――」
椎名さんの腕の中
僕はうっとりと背中を反らせ
失楽園の入口に立ち尽くす薫に笑いかけた。
最初のコメントを投稿しよう!