episode 97 同類

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episode 97 同類

家を飛び出して僕が向かう場所――。 そんなの決まってる。 「坊ちゃま、どちらへ?」 リムジンの後部座席に乗り込むと 「――九条敬のいるところ」 僕は運転手に向かって ぶっきらぼうに言い放つ。 「ですが……敬様は今晩ひどく遠方に……」 「いいんだよ!朝までかかってもいいから走れ!」 今夜は機嫌が悪いんだ。 誰にも有無は言わせない――。 「――分かりました」 運転手は渋々頷くと ご機嫌斜めの僕と距離をおくためか――。 運転席と後部座席の間の仕切り扉を閉めた。 そうして本当に――。 「ちょっと一体いつになったら着くのさ?!」 「遠いと申し上げたでしょう。ですがもうすぐです」 朝までかかるかと思う道のり――。 「――敬様は今夜あちらにお泊りです」 空気の良い山の上。 ひっそりそびえ立つ古城のようなホテルに辿り着いたのはゆうに夜中の1時を回った頃だった。 「九条敬の部屋につないで」 「は?」 「天宮家の末っ子が来てると言えば分かる」 「か、かしこまりました」 フロントの女の子は夜中に現れた珍客に多少困惑気味だったが――。 よほどの急用と踏んだのか すぐに電話を繋いでくれた。
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