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「――吸う?」
「ううん。僕さ、タバコって嫌いなの」
「そう」
「普段はね」
僕は椎名さんの筋肉質な腕をおもむろにつかむと
「だけど美味しい――悪いことした後だけ」
指先に唇を這わせるようにして
彼が持っている煙草を吸った。
涼しい目が僕を見下ろす。
「そう――美味しいの」
何を考えているのか
察しはついた。
灰皿に煙草を揉み消すと
椎名さんは隣に座った僕を優しく抱いた。
「ねえ。彼は天国に連れて行けたけど、君と僕はどうしようか?」
向かい合う形で僕を膝の上に乗せる。
優しい口ぶりとは裏腹に
その手は強引に僕を抑え込んで逃さない。
「どうするって?」
言いたい事は分かってるんだ。
「教えてよ――椎名さん」
だから僕は余計に
甘えた手つきで
彼の前髪をかき上げ弄ぶ。
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