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「遊ぼうじゃないでしょう?」
さすがに
――だまされてはくれない。
「こんな時間に君がここへ来たわけは?」
「決まってるでしょう。あなたに悪戯するためさ」
「和樹――」
強引な僕の手を甘く絡め捕り
九条さんは本物の兄貴のような顔でこちらを覗きこむ。
「兄弟喧嘩だよ。家にいたくなくて」
子供じみた理由。
今になってだらしなく乱れたシャツの襟元を正す僕を――。
「何?何があった?」
不安げに見つめ九条さんは尋ねた。
「いや、いつものとおり――でも悪いことばかりじゃないよ」
「どういうこと?」
「僕、お父様の秘密――聞いちゃったんだ」
僕は基本おしゃべり。
耳にした秘密を黙っている事なんてできない。
それが面白い物ならなおさらさ――。
「お父様の秘密?」
「そう。それがさ――」
意気揚々と語り出す僕を前に
なぜか――。
「しっ」
周りを気にした様子で
九条さんは口元に人差し指を立てた。
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